隣りの部屋の人、1週間くらい前からずっと不在だ。
ドアには丁寧にも「実家帰省してます」という紙が貼ってある。
でも新聞受けはいっぱいになってるし、
いちばん心配なのは、ドアの上にあるロフト用窓を開けっ放しで不在にしていることだ!
ぼくは何年か前、ここから空き巣に入られた。

空き巣に入られて財布を盗まれた。
現金4万円とその他カード類が盗られた。
しかもクレジットカードで40万円以上の買い物をされた。
あまりに悔しかったので、ぼくはそのことを泣きながら文字にして記録につけた。
かなり長いテキストですがここにコピー&ペーストします。貴殿の防犯意識に役立てて頂ければ幸いです。
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激録!空き巣被害ドキュメント
初出:2004年5月8日
突然ですが、戸締まりキチンとしてますか?
ぼくは先月4/24(土)、空き巣被害に遭ってしまいました。盗られたものは財布でした。財布の中には現金数万円とクレジットカードや銀行キャッシュカード、運転免許証やその他タワーレコードやHMVとかの点数を貯めているカードなどが入っていました。
犯人はどんな手口で犯行に及んだのか、被害にあったぼくはその後どんな手続きをし、そして悔し涙を流したのか。春の陽気で麗らかな休日の白昼に起きたこの空き巣事件を中心に、ぼくの一日をドキュメント形式で報告します。かなり長いテキストになってしまいましたが、これが貴殿の防犯意識の向上に役立てて頂ければ幸いです。
◆12:30 外出から帰宅、部屋の異変に気づく
午前中鞄を持ってあちこち歩き回り、お昼に自宅へ戻るついでに近所のスーパーサミットでもやしとかき揚げひと玉を買い、帰ったらこのかき揚げをおかずにそーめんでも食べよう、と考えながら鞄と買い物袋をぶら下げて自宅に帰りました。玄関ドアの鍵を開けようとしましたが、すでに鍵がかかっていないことに気づきました。「鍵かけ忘れて出ちゃったのかな」と最初は思いました。ちなみにぼくの部屋は鉄筋3階建てアパートの2階の一番奥の角部屋210号室、つまりアパート入り口の階段から一番遠い位置にあります。そして鍵の形状ですが、ピッキング防犯対策のため鍵は平べったい小判のような形をしていて、鍵穴も特殊な形状をしています。
http://www.keiden-jp.com/seihin/玄関から部屋に入ると、いつも閉めているはずのトイレドアやベランダのカーテンが開いています。でも勉強机の上のノートパソコンやCD棚、音楽機材などは朝出かける前と何も変わってません。しかし勉強机の左隅に置いておいたはずの財布がないのです。ちなみにぼくは財布をふたつに使い分けています。ふだん持ち歩いている小さな小銭入れと、この今見当たらない(結果的には盗まれてしまった)ヴァレンチノの財布です。ヴァレンチノにはクレジットカード類や額が大きめの紙幣を入れており、ふだんその辺へ出かけるときなどはこのヴァレンチノを自宅に置いて小銭入れだけを持ち歩いていました。
ヴァレンチノの財布がないことに気づきました。ぼくの記憶では勉強机の左隅に置いたつもりでしたが、あやふやです。そういえば、昨日実家の長野から戻ったばかりだったのでボストンバッグに財布が入れっぱなしなのでは、と淡い期待をもってバッグを調べましたが、財布はありませんでした。とりあえず部屋の中をあちこち探してみます。
ところでぼくの部屋にはロフトと呼ばれる小さな二階のようなスペースがあります。ぼくはこのロフトで寝起きしています。部屋の中から梯子を使ってロフトに上がります。ロフトは玄関と部屋をつなぐ廊下の真上に位置していています。ロフトの奥には窓もあって、この窓は外から見ると玄関ドアの上に位置しています。
ロフトに上がって驚愕しました。ロフトの上には布団を敷きっぱなしにしているのですが、その布団の上にくっきりと靴の跡が残されており、誰かが土足で布団の上を歩いた形跡があったのです!
(ちなみにこの布団は50万円もしました。この「50万円の布団を買ってしまう」という話はまた改めて書きたいと思います。)
ぼくはこの足跡を見て、誰かがこの部屋に侵入したのだ、そして財布を盗んで行ったのだ、とようやく理解しました。この事実に血の気がサーと引いて行く感覚にくらくらしながら、ぼくは110番通報をしたのでした。
◆12:50 110番通報、警官と鑑識班が来る
ぼくが震える指で110番をダイヤルした時刻は12時40分、電話の相手は非常に落ち着いた声で「どうされましたか?」と言うのでぼくは「今帰ってきたらですね、誰かが部屋に入って財布を盗られたんです」と言いました。動揺しているぼくに110番オペレータのおじさんは更に落ち着いた声で「それは空き巣ですね。場所はどちらですか?」
ぼくは自宅の住所(川崎市幸区)を述べると「幸警察署から担当者を現場へ向かわせますので、部屋の状態はそのままにしてお待ちください」と言って電話は切れました。1分ほどすると電話がかかってきました。先ほどの110番オペレータとは違う声です。「わたしは幸警察の者だが、今そちら向かっているんでね、そのままで待っててくださいね。それとな、今ちょっと被害の状況を説明してくれんかな。」ぼくは朝10時から12時半まで外出していたこと、帰ったら玄関のドアの鍵が開いていたこと、財布を盗られたこと、財布には現金とカードと免許証が入っていたことを説明しました。
しばらく待っていると12時50分に玄関のチャイムが鳴りました。出てみるとヘルメットをかぶったどちらかというとデブの部類に入るおまわりさんが立っていました。「幸警察です。たぶんね、ここから入ったんだよ、あとで詳しい鑑識もするけどな。ロフトっていうの? ここから侵入したんだわ。ところでカード会社とか銀行とかに止める連絡した?」ぼくは「あ、まだです。」と言うと、「早くやらなきゃ。わたしはここで鑑識班来るの待ってるから、きみは中で連絡を済ませなさい。」
ぼくは急いでカード会社に電話しようとしましたが、まずなにをどうしたらよいのかわかりません。少しパニック状態になっているようです。落ち着け、落ち着け俺。とりあえず、盗られた物のリストを書いて、そのリストのカード会社へ片っ端から電話して運用停止にしてもらおうと考えました。
クレジットカードが二種類、銀行キャッシュカードが三種類、そして運転免許証。
そうしているうちに鑑識班三人、そして先ほどのデブのおまわりさんがぼくの部屋に入ってきました。ライトだとかアタッシュケースだとかいろんな機材も部屋へ搬入されます。鑑識班の二人はまだ若い男性と女性でした。残る一人の男性はその二人の上司にあたる人なのか、年齢は一番上に見えました。鑑識班は手際よく写真を撮ったり、何かの薬品を噴霧したり、書類に書き込んだりしていました。とにかくこの狭い部屋ではぼくを入れて五人の人間が大騒ぎです。ぼくはカード会社へ電話をしている最中ですが、警察のおじさんたちは構わずいろいろと質問をしてきます。「このツマミがいっぱいついている機械はなんだ? これは楽器か?」
おじさんたちはぼくの説明を聞いて書類に部屋の状況等を書き込んでいきます。鑑識班は皆それぞれが別の作業をしており、玄関と部屋を出たり入ったりしています。それぞれの人がまず部屋に入るとこの複雑に配線された音楽機材が目に入るらしく、これは何であるか、と聞くのです。皆それぞれが手にした書類にこの機械がなんであるか記入するのに苦労しているみたいです。
◆13:15 クレジットカードの悪用が判明
ぼくはいろいろな書類(役所や銀行などから送られてくる通知や、買った電化製品の保証書なども)を一冊のクリアファイルに分類ごとに保管しております。通帳やパスポート、年金手帳なども一緒にファイルされています。一見ぱっと見るとこのファイルは写真アルバムのようにも見えます。机の引き出しに入れてあるのですが、犯人はここに通帳があるとは知らなかったようです。通帳は無事でした。ちなみに印鑑も別のところに保管してあったので無事でした。
まずクレジットカード会社に電話しました。音声案内に従ってダイヤルしていくとオペレータのお姉さんにつながりました。「カードが盗難にあってしまったので停止してください。」と告げました。氏名と生年月日を告げてカード停止処置をしてもらいます。被害状況なども一通り説明するとお姉さんはぼくにこう聞きました。「最近はこのカードでどんなお買い物をしましたか?」ぼくは「4月は渋谷のタワーレコードでCDを何枚か買いました。それとハッチというお店で眼鏡も作りました。」
するとお姉さんはこう言いました。「本日もお買い物をなさっていますね。マルタキというお店で宝石・貴金属類43万円のお買い物です。」
マルタキ? 宝石? 43万円? なんじゃそりゃ!
それは俺じゃない。俺はそんな買い物していない! ヤツだ、空き巣野郎がやりやがった!
ぼくはお姉さんに「そんな買い物してないよ! それはカードを悪用されたんです。43万はぼくが払うんですか?!」と聞きました。お姉さんはすぐに調査して保険が適用できるか手続きする、と言いました。
ぼくはおまわりさんに「カード使われちまいましたよ」と言いました。するとおまわりさんは「俺に電話代わってくれ」と言ったので受話器を渡しました。
「幸警察です。どうも。そのマルタキの件でちょっとお尋ねしますが、そのお店はどちら? 川崎駅前の質屋ですか。電話番号とか分かりますかね? そこまではわからない。ああそうですか。それと彼のマルタキでのお買い物は何時だったか分かります? 12時51分。あーどうもありがとう。」
おまわりさんはこんどは無線みたいなやつで本部と連絡を取り合ってます。「空き巣の件、さっき緊急電話あったのは何時? 12時40分ジャスト。それと川崎駅前のマルタキって質屋知ってる? うん、そうそう。電話番号教えて。はいありがと。」
おまわりさんはこんどは自分の携帯電話でマルタキに電話しているようです。「幸警察です。どうも。お宅ビデオカメラ設置してる? ないの? それじゃね、12時50分ごろにカードで宝石・貴金属類43万円で買い物したお客いたでしょ。どんな人だったか教えてくれる? うん、小柄のやせ形で、歳は27、8くらい。はいはいどうもありがと。」
おまわりさんはぼくに言いました。「犯人はどうもキミに似ているらしいぞ。ははは。」ぼくは「冗談じゃないっす、12時50分といえばおまわりさんがここへきてぼくと話していたじゃないすか!」と言いました。
その後ぼくは残りのクレジットカード会社一社、銀行三社にカード停止の連絡をしました。その都度、被害状況等を細かに説明しなければならず、かなり疲れました。その他のカードは悪用されていなかったようです。しかしおまわりさんはこう言います。「免許証も盗られたでしょ。キャッシュカードの暗証番号はまさか生年月日にしていないな? 免許証で生年月日が分かるからな。こないだ被害にあった人はそれで全額下ろされてしまったからねぇ。」
◆14:30 鑑識が終わり空き巣の手口が分かる
「キミな、これ見てくれ。」鑑識班の上司はぼくにトレースシートのようなものを四つ見せました。
「分かるか? この三枚は靴の跡だ。三つとも同じ、そしてキミんちにある靴とどれも一致しない。ということはキミ以外の人間がこの部屋に侵入したってことだ。この一つはロフトから検出された。これは廊下から検出された。で、これはドアノブに付着していたんだ。そして最後のこれは分かるかな?」
シートを覗いてみると、等間隔に小さな丸い点が並んでいる跡が見えました。
「これはな、たぶん手袋の跡だ。滑り止めのイボイボ型ゴムがついてるやつだ。これはロフト窓に柵が三本あるだろ。その柵から検出したんだ。」
つまり犯人は、ドアノブに足をかけロフトの柵を掴んでけんすいのような格好で窓から侵入したのです。犯人はロフト窓から侵入し、部屋を物色し財布を盗み、そして廊下を通って堂々と玄関のドアから出て行ったのです。
ぼくはこのロフト窓はどう考えたって人間が通れるとは思っていなかったので、いつも部屋の換気を良くするために外出中でも少しだけ開けていました。それが誤算でした。その小柄でやせ形のぼくに似ているとかいう犯人は、ぼくの部屋のロフト窓はいつも少しだけ開いていること、そして毎週土曜日は午前10時頃出かけて12時頃に帰ってくることを知っていたのです。計画的な犯行であることは、犯人が手袋をしていたことからも明白でした。更に犯人はビデオカメラを設置していない質屋がどこであるか知っていたということや、換金率が高い宝石・貴金属類を購入していることから、ますます計画的であることが分かるのです。
「こいつはプロだね。これでメシ食ってるやつだな。ここの向かいのマンションも今年の一月にこれとまったく同じ手口でやられたんだわ。ロフトから侵入して玄関から出て行く。みんなあのロフト窓は人間が通れるとは思ってないようなんだ。柵もついているからね。しかし俺みたいなデブならもちろん駄目だが、小柄で身軽なやつだとあのくらいの隙間なら簡単に通れてしまうね。そして犯人は間取りを熟知しとるっちゅうことだね。犯人はたぶん日本人のプロだよ。盗ったものが財布だけならアシがつきにくいことを知っているからね。これがもし外国人の窃盗団ならここにあるパソコンとかこのごちゃごちゃした機材とかなんでも根こそぎ持って行ってしまうだろうね。」おまわりさんがそう言ってました。
ぼくは「犯人がもしこの音楽機材とかCDだけ盗って行ったのなら、俺はたぶんそいつと友達になれたかもしれない。俺はそいつが音楽好きだと認めて、盗んだやつは返してくれなくてもいいなあ。」と言うとおまわりさんたちは少し困った顔をしていました。
鑑識結果をまとめた書類や、その他被害状況をまとめた書類など、一通り警察に言われるままサインと印鑑を押しました。おまわりさんは、受理番号というのが三日くらいしたら出るから、もう一度幸警察署の記録係に電話して確認してくれ、その番号はきっとカード会社に提出する書類や運転免許証再交付に必要なものだから、と言いました。
◆15:00 警察帰る、気が滅入ったまま夕方も出かける
また何かあったら幸警察まで気軽に連絡ください、と言っておまわりさんたちは帰っていきました。おまわりさんたちが帰った後、ぼくはサミットで買ったかき揚げが袋に入ったまま足下に置かれているのに気づきました。こんな事件があったおかげで昼飯を食べ損ねてしまったので腹が減っていました。そーめんを茹でてかき揚げをおかずにして食べていましたが携帯電話が鳴りまくります。さきほど連絡をとったカード会社や銀行、そして警察署からこの盗難の状況について更に細かく確認するための電話だそうです。それぞれになんども同じような説明をしました。電話をしてくるのは同じカード会社や銀行の業務を担当しているそれぞれの部課(例えば保険適用を調査する部署とかカード再発行の手続きをする部署とか)が別々に電話をしてきます。一本にまとめて電話してくれよ、と思いました。電話を切るとすぐに他の電話が鳴ります。そーめんを食べているところではありません。一時間ほど電話の応対に追われました。とうとう携帯の電池が切れたので、これでもう電話がかかってくることはないだろうと思いほっとしました。
夕方からも出かける用事がありました。過剰なほどなんども戸締まりを確認して家を出ました。
◆その後
空き巣に入られた日の小銭入れには千円も入っていませんでした。しかも土曜日でしたので、キャッシュカードがない自分は通帳と印鑑を持って預金を下ろすには月曜まで待たねばなりません。しかし土曜の晩も日曜の晩も、親切で寛大なご近所の方が夕食に呼んで下さって、ぼくは普段よりも豪勢な食事を楽しむことが出来たのであります。これなら毎日空き巣に遭ってもいいや、とか不謹慎なことを思ってしまいました。冗談ですけど。
翌月曜日には大量の書類がカード会社や銀行などから郵送で届きました。カード再発行手続きのための書類や、今回のカード被害に対して保険を適用するための書類などでした。そうそう、空き巣野郎が宝石・貴金属なんぞをぼくのカードで買った43万円は保険が適用されてぼくは一銭も払わなくていいのです。
しかし水曜日には幸区役所で住民票の写しを発行してもらい(¥300)、二俣川の神奈川県交通安全センターで免許証の再交付手続きに行きました(二俣川まで東横線と相鉄乗り継ぎで往復¥800、再交付手数料¥3360!)。盗られたのに、更に取られるのです。カード再発行手数料も一枚につき¥1050かかるそうです。踏んだり蹴ったりとはこのことです。
というわけで、「空き巣被害ドキュメント」でした。かなり長いテキストで、全部読むのに疲れたことでしょう。ぼくもこのテキストを書くのに二週間もかかりました。これというのも貴殿が防犯意識を高め、ぼくと同じような空き巣被害に遭って欲しくないからなのですよ。
空き巣に遭って以来、ぼくは毎日外出から帰ってくると、この前のようにドアの鍵が開いていて、部屋がめちゃめちゃになっているんではないか、という嫌な気持ちに襲われます。見ず知らずの野郎が自分の部屋に勝手に土足で入り込んでいることを考えただけでも嫌な気持ちになります。さらにそいつはたんすやら引き出しやら部屋のあちこちを物色し、大事なものを盗んで行ってしまう。しかも普段からぼくの行動をどこかの物陰でじっと見ていたというわけです。気味が悪いっていったらありません。
(びんかん)
あのパンダの国からやってきた隣りの彼女ら(4人くらいで住んでた)は、ディスコ並みの大音量ミュージックで同国の男子たちと毎晩大騒ぎしたあげく、大量のゴミを残していきなり消えました。今はそんなことがあったことすら知らない人がロフト窓を開けたまま静かに暮らしてます。