理論武装で攻め勝ったと思うなバカタレ
分かってる、仕方ないだろう他に打つ手立て無くて
威勢がいいわりにちっとも前に進めてないぜっ
黙ってる!この荷物の重さ 知らないくせして
ボクはいつも理論武装をしている。
ここでこの瞬間で、突然誰かに何かを言われても、的確にそして言葉巧みに反論し相手を説得させる。そういう脳みそのスタンスなのでいつもクレームをする。もちろん相手を選ぶ、弱い者には言わない。言ってもしっかりと受け止められる人にしか言わないんだ。自前の論理や理論で相手をねじ伏せてやるんだ、いつもそれを思ってる、いつも用意ができている。
発揮する時がきたのは仕事帰りの夕刻、最寄駅に降り自転車で家に向かっているときだった。
「ちょっと・・・ちょっと・・・」
呼んでいるのは、ケイサツカンという名の制服を身に纏ったオトコだ。iPodでバンド課題曲を聴いているボクは気づくのに遅れた。
「なに?どした?」
「あの、その自転車に鍵が・・・、あー、あるんですね」
ボクのチャリに備え付けの鍵はもとから付いていなかった。だからワッカを回している。
その存在はかごの中を見るまで、彼は気づかなかった。
「あるよ、だからなんだ?」
「いえ、そのー、自転車の鍵というのは、車輪の近くにフツウついているもんで・・・」
嫌らしい目つきで自転車に懐中電灯をあて、つぶさに調べる。
「おい、あんた、フツウってのはどこの世界のフツウだ?言ってみろ」
ボルテージの上がったボクの声は、閑静な住宅街で響き渡る。
「いえ、だからフツウなんですよ」
「だから、どこの世界でのフツウか?と聞いているんだ、答えろ、今すぐに答えろ!」
「いや、あのー、だから・・・」
「だから、じゃねーだろ。’ですから’だろっ!」
「はい、すみません、ですから・・・フツウは・・・」
「じゃー、俺が今すぐに分かるようにそのフツウとやらを証明させろ!いまっすぐにだ!!」
行き交う人がニヤニヤとボクをみる。
「おい、職質している理由をはっきりしろ。でないと、協力できるものもできんだろうが!」
「あの、すみません、私の言葉が足りませんでした」
唇の震えたケイカンは、やっとの思いで言葉をつなげた。
つまり、彼はライトをつけて走っていたボクであるにも関わらず、じっとりとした目つきで自転車を見つめ、鍵が無いことに気づき盗難車としての疑いがあったのだ。それを説明してから捜査すれば、もちろん文句はない。だが、そのバカ(生粋)は国家権力においてすべてを封じこめようとし、あげくの果てに「交番まできてくれ」などとほざき始めた。防犯登録シールどころか、車体番号なるものも探したがなかったからだ。
「交番に行ったところでどうなるか、それを説明して俺を納得させろ。納得したら行く」
「いやー、とにかく今ここでみてもわからないので・・・」
「だったら、どこ行ったって見つかるわけないだろ!おい、さてはお前ポイント稼ぎだな???」
「いやぁ。。。そういう訳ではないですが・・」
「なんだ、ポイント稼ぎだったら行ってやったのに・・・」
「はは・・・・」
んだ、このばかは。どこまでバカなんだ。
探しても探しても番号の刻印は見当たらない。探しながら壁にあったチャイムを押してしまい、中から人が出て来てしまった。スンマセン。
「とにかく、交番に」を連呼するバカに、
「お前さ、セオリー通りにやりたいのはわかるけどよ、交通課なんだから車体番号くらいどこにあるか、しっかり勉強してから職質しろよ。市民を混乱に陥れるなよ、わかってんのか?ちゃんと勉強しろ、っつってんの」
「えー、ですからフツウはこのあたりに・・」
「だから、どこの世界のフツウだ?ってさっきから言ってんだろ!?」
「・・・・」
「答えられないようなことを言うな、お前ナメンなよ」
「・・・」
「さてはお前大原だな?」
「いえ、違います」。
そういうことははっきり言えるんだな。つまり、そこらへんは勉強しているんだ、ちゃんと。
仕舞いには誰にもらったか言え、といい連絡取りたいというので、「じゃー死ねば?」と答える。
「そういうことですか・・・」
なんだ、ものわかりいいじゃねーか。
そしたら、あなたのお名前と住所を教えてください、そして一応その方の名前で防犯登録検索してします、というので、まだ”生きている”その友人の名前を答える。
携帯の番号は?
あん?ねーよ。嫌いなんだ、そういうの。
大変ですね、連絡とか。
手紙ってもんがあるだろう、手紙ってのが。
「では、調べてから連絡致しますので・・直接お宅に伺います・・・」
「おい、おめーはどこまでバカなんだ?名前を聞いたら、テメーも名乗るのが筋ってもんだろうがよ!」
「あ、失礼しました」
といい、警察手帳を見せその隙間から、名刺を出す。
地域3係・・・ですかね。
「こんどまた職質されたら、この名刺見せるからそれまでにちゃんと調べとけよ、いいな?」
「はい」
「それとこれ(名刺)な、今夜2チャンネルな、覚悟しときな」
「はい、わかりました」
なんだよ、2ちゃんしらねーのかよ。
はじめっからちゃんと筋を通して話しかければいいものを、国家権力にものを言わせようとするから、普段から武装しているボクはその瞬間有事であると判断し、石破先生と共に見事なまでに言葉巧みな理論を展開した訳だった。しかし、警官は本当に謝らない。「目が合ったら容疑者と思え」とか糞みたいな理論は教えて、「間違いには素直に謝ろう」ということは教育していないんだな。
あ、ゆとり教育のせい?いや、これは親の教育か?
そして、家に帰るボクは「ごくろうさん」と一声掛けまた自転車をこぎだす。イヤホンからボクを励ます歌が聞こえる。
セブンデイズワー 戦うよ・・・
(てくにこ)
だったら納得っ!